第六話「アオオニ」

『ぼくは、何者なんだろう』

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「——やめろ!」

——ゲシッ!

レンは脚にしがみつこうとする
アオイを思わず蹴り払った。

「痛いッ!何すんだよ!!」

「うるさい!
 ——『ウォレット』!!」

ジェネレーターでミントをする際には、
“裏ETH” という通貨が必要だ。

裏ETHは貴重なため、
マイニングするにも莫大なコストがかかり、
すぐに調達することは不可能である。

レンのウォレットには、
裏ETH……つまりガス代が
連戦により空の状態であった。

(このまま黒炎を受け続けるのはまずい。
 だが、ガス欠でミントは無理だ……。
 どうする……)

レンはリゼに向かって叫んだ。

「——リゼ!
 裏ETHを『トランスファー』
 できるか?!」

リゼはコンテナの破片を盾代わりにし、
銃撃を防ぎながら、苛ついた声で答える。

「ムリだ!お前に送るガスがあれば、
 もう『ミント』してるっつの!」

リゼも、レンと同じだった。
昨夜の襲撃によるミントの連続で、
ほぼガス欠状態だったのだ。

(クソ!ここままだと、
 消耗してやられる。時間の問題か……)

「!!」

ふと、アオイの顔を見た
レンは一つの策を思いつく。

——まだ早いか?
 ……いや、賭けてみる価値はある)

レンは渋り、顔を険しく歪めたが、
少しの可能性に賭けることにした。

「おい、アオイ!手は動かせるか?!」

「!!?」

突然名前を呼ばれ、アオイは驚いた。
レンは捲し立てるように早口で続ける。

「ウォレットはあるな?!」

「……ヘルメスで必要だったから
 一応作ってあるけど……。」

先日のヘルメスとシン日本との抗争は
アオイの初陣だった。

その初戦に備えて、
ウォレットと少量の裏ETHを
アオイは用意していたのだ。

「ワタシの靴にデジペンが差してある!
 それで何か描け!」

レンは黒炎に耐えるティエンを
後ろから支えながら、
右足を後ろに下げた。

足元に備えた金属製のペンが
太陽の光に反射する。

……しかし、
アオイは半べそをかきながら、
レンの言葉を拒否した。

「嫌だよ!出来るわけない!
 もし描いても皆みたいな、
 すごいのなんて出てこないよ!」

「いいから、描け!!」

ティエンの右翼は限界を迎え、
ダラリと垂れ下がっている。

何とか左翼を広げて攻撃を防いでいるが
そろそろリミットが近い。

迫る危機に、レンは怒号を上げた。

「アオイ!!描け!!!」

「分かった……分かったよ!!」

アオイは泣きながら、コクコクと頷き、
レンのブーツから金属製のペンを抜いた。

ペンには緑色の玉のようなものが、
嵌っていて、深く濁った輝きを放っていた。

「それが『ジェネレーター』だ!
 ボタンを押せば、空中に絵を描ける!
 描いたら『ウォレット——ミント』
 って叫べ!」

(くそ!丸焼きにされて殺されるなら、
 処刑されて死んだ方が
 楽だったんじゃないか……?)

アオイが一瞬後悔しかけた、その時。

——ドクン!!

「!!?」

アオイは、
襲い掛かる黒炎を目に焼き付けながら、
今までにない感情が湧き上がるのを感じた。
青く、重たい——殺意。

「どうせ死ぬなら……
 一発入れてやるよ……!」


アオイは覚悟を決めると、
ジェネレーターを強く握りボタンを押した。

ヴゥン——!

そして、必死に空中に絵を描き殴り、
地面に右手をあてた。

「くそ、見てろよ……!
 『ウォレット——ミント』!!!」

————ゾワッ!!??

「!!?」

アオイが唱えた瞬間、
その場の全員が急に悪寒を感じた。

「なんだ、あの姿は……」

リゼが最初に反応すると、
寒気がする方向をその場の全員がみた。

——シュー……。

——そこには、
冷気を身体から漂わせる
“青い鬼” の姿があった。

大きさは成人男性の一回り上くらい。
全身は氷で出来ていて、色は青く透き通り
ゴツゴツとしている。
頭部には、一本鋭く尖った角が生えている。

その姿は恐ろしくもあるが、
朝日に照らされて輝き、美しくもある。

「……おいおいおい、なんだそりゃ。
 ただのデカい鬼じゃねぇか。
 そもそも、
 コネクトしなきゃ動かねえだろ」

「○○」は口では舐めていたが、
その鬼の異常さに気が付いていた。

「フン、先にその鬼を壊してやるよ!!
 『バーン』!!」

「○○」はそう叫ぶと、
黒炎を鬼に向かって勢いよく飛ばす。

——ゴォォォォォ!!!

—————ガキンッ!?

「!!?」

その時、
誰にも予想できないことが起きた。

通常、ミントしただけのNFTは
コネクトしなければ動かないはず。

しかし、
その鬼はまるで自我があるかのように
右手を前に差し出したのだ。

放たれた黒炎は、
鬼の掌にぶつかる瞬間、凍りつき
キラキラと輝きながら、地面に落ちた。

後ろから見ていたリゼも、
その光景に驚異で目を見張った。

「なに?!
 動くはずねぇだろ。まさか……」

フッと、笑みをこぼすレン。

すると青い鬼は、
氷で出来た重く硬い口を開いた。

「——え?
 どうなってるの?」

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